中国の鉄骨工場で見かけた謎の鉄球
とある海外物件。
クライアントから、急いで設計をしてほしいものがあるんだ(英語)。
中国の杭州(ハンゾウ)の鉄骨工場ならすぐ作れるらしいから、一緒に行って話を聞いてくれ(英語)。
ということで、急ぎ杭州へ。
杭州は上海の西、上海虹橋空港から新幹線で30分くらいに位置する風光明媚な古都。
近くには世界遺産にもなっている西湖があり、北京や上海と比べてもスモッグも少ないし、良いところでした。
西湖を見る時間がなかったのは少し残念。

問題の鉄骨工場(ファブ)
僕は今まで、タイのシノタイ、中国のグランドタワーなど、3か所の海外ファブとお付き合いした事があるのだけど、とてつもなくデカかった。
他とは比べ物にならないくらいデカい!
工場の外周道路はF1でも開催できそうな広さだし、制作ラインも300mX50mのラインが3本。すべて建屋になっている。
そこで作られている物はというと、

こんな形状も作るんだ~。
これは、スタジアムの屋根を支える支柱らしいです。
全くもって何でもありか。
このファブでは、北京オリンピックのメインスタジアム(鳥の巣)やCCTV、北京空港T3ターミナル等も担当したとか。

それを聞いたら納得です。
そこのファブで、プロジェクト用に勧められたのは、これ。


システムトラスか!?
ファブのマネージャーさん曰く「それは高いから、今回のプロジェクトではお勧めしません。こっちに来てください」

マネージャーさんの笑顔!
でも、ナニコレ‼
トラスのボールジョイントですよ。
これだけあれば、どんな大きさの鋼管でも、どんな角度でも溶接できます。
そりゃそうだが…
このシステムなら、一週間で施工図を書いて、1か月で出荷できますよ。
安いし早いです。北京空港もこれです。
わかるけど。
ちなみに、この巨大な球を使った北京空港はこちら。


ルーバーでうまいこと隠しているけど球があるなぁ。
溶接だって、下向きだけじゃできないじゃん。
オーバヘッドや斜めオーバーヘッドでも溶接しなきゃいけないでしょ。
それに、この球どのくらい重いの?
このシステムで設計しても責任持てんなぁ。
クライアントも、あまりお気に召さず、ここまで来たけど、あまり気にしないで設計進めてくださいと言われました。
中国ファブの溶接の力量は、こんな感じ。
これは大体どこも同じで、溶接の開先加工をガス切断でやっているので開先が汚くて工作精度がおおらか。
溶接そのものは上手いので何とかなっている感じ。
中国で組み立てて、他国の溶接技術者が溶接するとなったら、かなりエラーが出るんだろうなぁ。
ちなみに、僕は海外プロジェクトで海外のファブを使う時でも、第三者検査は日本の会社にするよう指導しています。
ここからは、僕なりに思っている鉄骨事情。
実はJIS鋼材も、中国規格の鋼材もベースはイギリスやアメリカの規格となっていて、強度とサイズは一緒。
日本は地震国で、衝撃的な荷重で断面欠損や溶接で熱硬化した部分から破断現象が起こるのを防止するために、ベースは変えずに、炭素当量を規定したり、伸び性能等を追加して規定しています。
なので、海外鋼材も2次部材何かだと使えるんじゃないかなぁと思っています。
で、今話題の高力ボルト。
日本で使われているのはF10Tなのですが、海外の主流はF11Tです。
かつては日本でもF11Tを使っていましたが、トルシア型(ピンテールのボルト)の普及とともにF11Tの遅れ破壊(施工後しばらくしてから切れちゃうこと)が頻発して、強度を少し下げて、10Tとなったと昔教わりました。
今から45年位前のことです。
でも、中国とか海外では未だに11Tが主流なのです。
遅れ破壊は大丈夫なのかなぁとも思いますが。
ということもあり、外国製高力ボルトの認証をとって輸入するなどということも時間がかかるのだろうと思っています。
(あくまで個人の意見です)
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