これからの免震構造 その1
今回は自己PRを兼ねたお仕事の話。
以前、ナイアガラの滝の話を書きましたが、その続きのようなはなし。あれからもう一年経つのですね。
今回、タイトルに「その1」と付けましたが、以前のブログテーマと同じように、続編が書けるのはいつの事やら…
袋井市のHPで、新しい消防庁舎建築工事の現場報告が掲載されています。
ナイアガラの滝で試験したダンパー(違う違う、ナイアガラの滝のそばのメーカーで試験したダンパー)は、袋井市消防庁舎用のダンパーだったのです。
アイキャッチ画像にも使っている、ロンドンのミレニアムブリッジで歩行振動を止めるためにダンパーを設置しましたが、そのメーカーです。
袋井市消防庁舎は来月竣工予定です。
それがこのダンパー。(袋井市HPより転載)
なんと、5m以上あり、これを24台設置しています。
袋井市の中心部は東海地震で大きく揺れる可能性がある場所です。
建設地も非常に大きな揺れが予想できる場所でした。
現在の技術で考えうる最大級の地震(地震対策推進本部第4次報告、南海トラフ地震東側起点モデル)をハイブリッド合成法で再現してみると、速度応答スペクトルは、1-2.5秒で600kine!
一般的な免震周期の4秒で250kine。建物無被害、緊急出動が可能なレベルを探すと、7.5秒-150kineという結果に。
長周期地震動と呼ばれている、基整促波SZ1の実に4倍のパワー‼
消防の方に、この場所に消防本部を建てるより、小笠山の方にした方が良いです、と進言しましたが、帰ってきた答えは
「こういう場所だからこそ、消防本部が必要なんです!大きな被害が予測できるところにこそ、消防が必要なんです!」
かっこいー
じゃあ、何とか挑戦してみましょう。
皆さんはどう思いますか?
少し調査や勉強をしてみたら、法で定められている地震レベルの4倍の大きさの地震のリスクが有ると知ったとき。
知らなきゃよかったとはこのことです。
知ってしまった以上、真摯に対応しよう。
Fire Fightersの熱い思いを形にしよう!
そう決意してみたものの、そこには高い高いハードルが。
応答変位は1m弱、応答速度は200kine弱
これに対応できるダンパーが無いのです。
認定取得したダンパーとリニア特性の認定未取得ダンパーを組み合わせて、認定未取得ダンパーが有っても無くても、基準法レベルの地震では設計レベルを満足するし、南海トラフ地震では、未取得ダンパーが有効に働く。
こんなストーリーで大臣認定取れないですか?と交渉しましたが、答えはNO。
免震層の中には、認定品以外を使ってはならないとの答えでした。
そこで、37条の材料認定の個別評定を受けて、そこで認められた性能で20条の大臣認定を受けるしか道がなくなりました。
そのためには、試作品を作って実験をする必要が有りました。
認定をもらうためには1年必要です。
そのことを、熱きFire Fighterに話し、設計工期1年延長のお願いをし、市町にも直接説明申し上げ、何とか、工期延長、前代未聞の7.5秒免震への挑戦が始まりました。
ダンパーも異なる種類を組み合わせるのではなく、必要な性能のダンパーを設計しちゃおう。という事で、低速域では穏やかに作用(50kine-1000kN)して、高速域ではがっつり効く(200kine-2150kN)、ストローク900㎜のダンパーにしたのでした。そうしないと、時々起こる地震の時効かない、なんてことになるのです。
本当は低速域をもっと落として、中速域で減衰が大きくなって、高速域は一定になる、「S」字曲線のダンパーにしたかったのだけど、それは難しいそうです。
設計の結果、積層ゴム支承はたった4台、それ以外はCLBです。
氷の上に建物を乗せているような、そんな状態です。
風に抵抗できるのは、4台の積層ゴムとダンパーだけです。
一応、風にもダンパーが効くという事を実験で確かめました。
大臣認定を取っていないダンパーを使って、クライテリアに合わせた設計をする、こんな設計の仕方もあることを紹介したくて通常は建物竣工後に記事掲載をするのですが、工事契約後の昨年6月、ビルディングレターに技術レポートを掲載していただきました。詳しく設計データーをご覧になりたい方は、ビルディングレター(日本建築センター)2018年6月号をご覧ください。
1年間に及ぶ評定終了後、委員の日本大学・古橋教授が「こうすれば7.5秒免震ができるんだね」の一言が凄く嬉しかった思い出があります。
「免震層には、大臣認定品しか使えません」この一言も今後の免震構造を設計するうえでヒントになるかもしれませんね。
因みに、ナイアガラ・バッファローのメーカーとは、当然英語で話していました。
高いレベルの専門用語が必要なので、通訳は役に立たないのです。
CODESIGN STRUCTURESは、高い専門知識、市長にも説明できるプレゼンテーションスキル、語学力、そして経験で新世代の構造を生み出してまいります。
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ところで、次世代免震については、またアップします。出来るだけ早くできるよう、頑張ります!

