TOTOミュージアム
TOTOミュージアムは、TOTO株式会社創業100年を記念して建設された施設で、2階建てのアーチ状の建物と4階建ての丘陵状に積層した建物から構成されています。
この形態も、規模も全く異なる建物を、一つの免震システムにまとめ、2棟間を構造的にも繋げて計画しています。これは、アルファベットのh形の平面形をもつ、東北大学メディカルメガバンクを設計したときに掴んだノウハウが有って実現したと考えています。
TOTOミュージアムの設計に関して一番聞かれることは、アーチの部分は何で作ったのですか?ということです。建築意匠のリーダーは、衛生陶器のようにヌメッとした質感で実現したいと言ってきます。当然、部材断面の厚さや内部と外部の境界での質感の均一性など、こだわらなければならい事がたくさん有ります。
僕らも非常に悩みました。構造家で東京大学准教授の佐藤淳先生をお招きして、どうやって作ろうか等とディスカッションを重ねました。当然、RC(鉄筋コンクリート)で作るという案もありましたが、建物重量を軽くするのが一番良いということで、鉄骨造を選択しました。
次に防水をどうするか。できるだけ目地がなく、衛生陶器のような質感。鉄板を溶接して、溶接したところをグラインダーで削るとか、ヨットのようにFRP樹脂で作るとかという案もありました。鉄板案は、芸術品クラスのコストがかかる試算に。FRPの施工は屋内でなければできないとのことで、この建物の外に更に仮設建物を作ることは無理だと判断し、高性能のシート防水を選択しました。
防水は決まったけれど、下地はどうするか。この建物は、外壁と屋根の境界が有りません。壁は1時間耐火、屋根は30分耐火です。
ある日、デッキプレートならデッキと直交方向なら現場でも簡単に曲がるんじゃないか!と、ひらめきました。長手方向は割り付けで曲率を作り、曲率がきついアーチ方向はデッキを手でなじませる。耐火の問題も、鉄が下地であれば耐火被覆で解決できる。
こうして、南側建物-アーチ状建物の構造計画の骨格が固まりました。
更に、共に設計を担当したスタッフから、遺伝的アルゴリズムによる最適化手法で、応力が最適になる形態を求めたら合理的だ、との提案を受け、彼の努力もあり、最大スパン25m、高さ11mのリングアーチをH-450×200というサイズで実現しました。
建築的、構造的に南側のアーチ建物に注目が集まるのですが、積層された北側建物も難しいものでした。庇が深く、セットバックしていく建物。1階と2階は、ミュージアム機能やホール機能があるため、スパンが大きく、柱が少ない形態。上階で柱が必要なところに、下階では柱が立てられない。
佐藤先生とのディスカッションも有り、また、羽田空港国際線の江戸小路で岸和郎先生とやった、鉄骨による板築を思い出し、鉄骨で枠組みを作り、ブレースを入れたり、トラス梁にすれば少ない通し柱でも成立する事を確認しました。
パラメーターを多くするとまとまらなくなるので、建物のグリッドを5mx5mとし、そのグリッドで柱を入れたり、抜いたりをコンピューター上で行い、安定する構造フレームを探し出しました。柱は基本的に□-300とし、壁の内側に内蔵させることにしました。一部の柱を除き、内部に柱が現れない計画です。一緒に担当したスタッフも時には意匠担当者とケンカしながらも、一生懸命頑張り実現した構造です。
最後に、模型用の木材で構造模型を作り、構造的な合理性が確保できているかを確認。この模型がオープニングの特別展で展示されているのを見て、担当スタッフ皆で喜び合ったものです。
設計はチームワークこそ大切だと強く感じた作品です。
CATEGORIES
DESIGN
株式会社梓設計
AWARD
第58回 BCS賞(2017)
第50回 日本サインデザイン賞 最優秀賞(2016)
福岡県屋外広告景観賞(2017)
第10回 建築九州賞 佳作(2016)MEDEA
日経アーキテクチュア 2015/10/25号
新建築 2015/10月号
鉄構技術 2018/06月号TOTO MUSEUM URL















